注目を集めている、新しい教育【STEAM教育】
文部科学省においても、STEAMとデザイン思考の必要性を重要視されています。
さて、STEAM教育のSTEAMは
Sicence(科学)
Technology(技術)
Engeneering(工学)
Arts(人文)
Mathematics(数学)
の頭文字です。
科学技術の根幹となるSTEMに加え、人に寄り添ったデザインや表現する力であるArtsが加わりました。
始まりは21世紀初頭。
米国にて情報化社会において変革を起こす人材を育むためにSTEM教育が提唱されます。
現在は
「人々にとって真に役にたつこととは?」
「人々が面白いと思えるものは?」
そうした人の気持ちに寄り添い共感を大事にする「芸術・人文主義」の思想や行動原理も重視し、2013年頃からArts(芸術・人文主義)を加え、STEAMに発展したという背景があります。
これを学ぶことで
「人々が生きる社会・人類の未来に寄り添う心を持ち、自ら社会の課題を見つけ出して解決していく能力を育成」
していくのがSTEAM教育の目的になります。
具体的にどのようなことを学ぶのか、学ぶ方法、学べる教材や場所について解説して参ります。
STEAM教育で「なにを」伸ばすのか?
知識:STEM領域を全ての人が学ぶ
「自ら社会の課題を見つけ出して解決していく」ために必要な知識とは何でしょうか?
現在は、多くの方がスマートフォンを持ち、即時に物事を調べられ、オンラインで意見交換ができる情報化社会です。
そして、全てのモノがインターネットに接続されるのが目前となる中、子どもたちにとって、デジタル機器は文房具のように身近なものになっていくはずです。
デジタル機器はSTEM領域(科学技術)の塊です。
これまでの日本では、科学技術の知識がある人は理系といわれる一部の人でした。
しかし、今後はそうした身近で使われている技術を、すべての人が理解し扱えるようになっていく必要があります。
よって、STEAM教育では、すべての人がSTEM領域を横断・融合的に学び、知識として身につけていきます。
スキル:4つのC
「自ら社会の課題を見つけ出して解決していく」ためのスキルとして、米国の全米教育協会では、以下の「4つのC」を提唱しました。
「批判的思考」とは、自分の思考の論理構成や内容について適切であるか、自分自身で見つめ直す思考のことです。
言い換えると、質問に対してパッと出す反射的な思考ではなく、内省的な過程を経る、要は「自分の思考にツッコミどころがないかを検証する」ということです。
「コミュニケーション」「協働」は、他者と協力して何かをするためのスキルです。
そして、前例のない問題に対する独創的なアイデアを生み出す「創造性」、これら4つが社会課題を解決するのに必要なスキルとされています。
一筋縄ではいかない社会課題を解決するためには、それぞれが「批判的思考」をもって熟考し、多様な人々と「コミュニケーション」をとりながら「協働」し、独創的なアイデアが必要だというのは、納得がいきますね。
心持ち:「社会を変革しよう」という気持ち
知識・スキルは整ったところで、あとはそれらを活用する「心持ち」が必要になるでしょう。
私達の行動は、育った環境や学んできた専門領域から生まれる既存の価値観、いわゆる「思い込み」にしばられがちです。
そうした「思い込み」を一旦なくし、とにかく形にしてみる、失敗したら何が悪かったのかをそこから学ぶ、そうした「挑戦心」や「試行錯誤する力」を養っておけば、知識やスキルを十分活用することができるでしょう。
このように、STEAM教育では「知識×スキル×心持ち」どれをも育んでいくことが重要になります。
STEAM教育で「どのように」伸ばすのか
アプローチ:教科横断的へ
知識やスキルといった道具を使って既存の価値観にとらわれずに発想するには、いろんな分野を融合的に学び、回遊することが重要になってきます。
数学的な考え方、ものづくりのアプローチ、デザインの考え方、そうしたものを融合させることで既存の価値観にとらわれないようなスキルが身についてきます。
こうしたことから、教育現場においては教科ごとの縦割りで教えるのではなく、各教科の内容を精査した上で互いに呼応できそうな要素を上手に関連させて教えるようなアプローチが取られることになります。
残念ながら、現状の日本の公立学校は教科学習型です。
2020年度に学習指導要領が改定されたばかりですので、今後しばらくは教科横断的なスタイルにはならないと考えられます。
次期の学習指導要領改定時に変化が訪れることを期待したいです。
学び方:学習者主体の「探究型」へ
従来の学び方は、教師が主体となって知識やスキルを、児童・生徒に教えていく「指導型」のスタイルでした。
こうした学習スタイルですと「失敗を恐れず、まずはやってみて、他者からフィードバックをもらい、試行錯誤していく」といった行動ができる人間を育てるのは難しいと思われます。
ですので、今後は児童・生徒の学習者が主体となり、教師はファシリテータに徹するような「探究型」のスタイルに移行する必要があります。
「探究型」の学びには、以下のような例が挙げられています。
(参考:リンダ・ダーリン・ハモンド『パワフル・ラーニング』深見俊孝編訳、北大路書房)
探究型の学びをするためには、学習者(児童・生徒)が自ら学びたいという気持ち「探究心」も大事になります。
日本でも、学習者が能動的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」が聞かれるようになってきました。
先日、息子の学校の授業参観において、そのような授業を見学することができました。
社会の授業でしたが、「GIGAスクール構想」で配られたタブレット端末を使用し、自分の都道府県の特産や特徴を調べて白地図に書き込む という授業でした。
先生はいくつか特産品を例に出してはいましたが、子どもたちが自分で思いついたものをインターネットの検索機能を使って調べ、地図に書き込んでいくという授業が展開されていました。
現状はまだ、受動的な授業が多いかもしれませんが、今後はこのような、子どもたちが能動的に学ぶ授業も増えてくるものと大いに期待されます。
STEAM教育のキーワード「探究」「共感」
STEAM教育は、枠を横断・回遊して学んでいく教育です。
それぞれの領域や分野にとらわれずに、融合して学んでいきます。
そうしたときに1つ重要なこととして「探求し続ける」姿勢があげられるでしょう。
好奇心を持つ → 疑問を持つ → 仮設の検証 → 新たな発見
のサイクルをし続けることがSTEAM教育では重要になります。
もう一つのキーワードとして「共感」があります。
「課題を自ら見つける」というのは、「何に困っているのだろう?」「根本的な原因は何なのだろう?」と他者の心に寄り添う力が必要です。
また、協働するにも、人々や仲間の心に「共感」し、意見を受け容れながら発展していくというプロセスが重要になってくるでしょう。
こうしたことから「共感」も重要なスキルの1つです。
STEAM教育は受験に役に立つのか?
中学・高校・大学受験は入学者の選抜のための試験です。
STEAM教育が「受験に役に立つのか?」というのは、正直何とも言えません。
冒頭で、STEAM教育は「人々が生きる社会・人類の未来に寄り添う心を持ち、自ら社会の課題を見つけ出して解決していく能力を育成」する教育であると申し上げました。
これにリンクした思想をお持ちで、そうした人材を選抜しようと思われる学校もあるでしょうし、そうでない学校もあるでしょう。
ですが、社会で活躍するための力は、STEAM教育で育むことができると私は考えており、受験に関係なく、社会に広く浸透していってほしいと思っています。
なお、都市部の私立中学受験の問題は、教科の枠組みを越えたSTEAMの考え方を求める試験に変わってきているところもあるようです。
まとめ 親として何がサポートできるか?
このように、STEAM教育について掘り下げてきました。
正直、盛り沢山な印象です。
親としてサポートできることはないのでしょうか?
まず、私が受けてきた教育は「社会に適応できる人間」を育てるような教育でした。
一方、STEAM教育で子どもたちに求められるのは「社会を変えていく人間」です。
ですので、自分が受けてきた教育のイメージで子供を型にはめることのないようにしたいと思います。
また、家庭で最もサポートできる部分としては、「心持ち」かと思います。
「社会の課題を解決しよう! 変革しよう!」という気持ちはだいそれたことのように思えます。
ですが、このイメージを持ちつつ、何かを始めたところで損をすることはないのではないでしょうか?
子どもの「やってみよう」という気持ちを大事にし「好奇心」を応援します。
子供の意見をきちんと聞いた上で、他の見方を与えてみます。
失敗してしまったときは「うまくいったこと」に気づかせ、次に「どう行動すべきか」を一緒に考え、失敗を恐れない心を育みます。
シンプルにいうと、「頑張った」を必要十分に認めてあげることが重要なのだと思っています。
以上、長くなりましたが、STEAM教育のご紹介でした。
▼本記事を書くにあたり、以下の書籍を参考にしています。
▼子供の失敗に対して、ついつい叱ってしまう。そんなときに私はこの本に出会って救われました。
▼できないと自信をなくしがちな子にどう声をかけていくか悩ましい方へ、「マインドセット」という書籍について記事にしています。よろしければご覧になってみてくださいね。