教育

STEAM教育とは? STEM教育との違い、伸ばす能力について

教育

STEAM教育とは、
「人々が生きる社会・人類の未来に寄り添う心を持ち、自ら社会の課題を見つけ出して解決していく能力を育成する教育」
のことです。

STEAM教育のSTEAMは
Sicence(科学) Technology(技術) Engeneering(工学) Arts(人文) Mathematics(数学)
の頭文字を取っています。

従来の日本の教育を受けてきた私が最初にSTEAM教育という概念を耳にした際は、「理工系教育+芸術の教育をするということなのだろうか?」と思いました。

調べてみると、大事なのはSTEAMの文字に現れている分野にとらわれることではなく、その根底に流れる「理念」「精神」にあるように思えます。
また、STEAMはその理念を実現するための手段であって、目的ではないということがわかってきました。

こうした教育概念が生まれた背景、この教育が目指すところ、またそれを実現するために伸ばしていきたい能力について、以降に詳しく見ていきたいと思います。

STEAM教育が生まれた時代背景 

STEAM教育の歴史
  • 21世紀初頭「情報社会(Society4.0)の発展」に伴いSTEM教育が提唱される
  • 2010年代からArtsが加わりSTEMからSTEAMへ発展
  • 「超スマート社会(Society5.0)」を見据えた人材を育てていくことが目的へ

まず、一般論として教育とは
「ある人間を望ましい姿に変化させるために、心身両面にわたって、意図的・計画的に働きかけること」です。

学校教育において「人間の望ましい姿」は社会が求める人材像であると捉えられます。
「社会が求める人材像」に求められる能力は、時代によって変わってくるものだと思います。
よって、STEAM教育のような新しい教育アプローチが出てくる時代というのは、時代の過渡期にあると考えられます。

それでは、STEAM教育が生まれた背景には、どういった時代の変化があるのでしょうか?

STEMの提唱 21世紀の始まり頃

STEAM教育は、その前身であるSTEM教育という概念から発展したものです。
ですので、まずはSTEM教育の成り立ちから見ていきます。

STEM教育は、21世紀の幕開け頃、米国の教育関係者や政府関係者の間で提唱され始めました。
この教育概念が提唱された背景として「情報社会(Society4.0)」に突入してきたことがあげられます

「情報社会(Society4.0)」とは、インターネットの登場によって容易に情報の共有が可能となった社会のことです。

政治家たちは、高度にシステム化されていく社会の中でイノベーションの創出を担う人材を育成することが国の競争力や影響力につながると考え始めます。
こうして、未来を担う人材は科学技術の分野で高い専門性を身につけることの重要性を感じるようになりました。

よって、Sicence(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の4つの領域の学びを活発にし、科学技術にたいする造詣を深めて、社会に応用するための知識やスキルを持つ人材育成を推進することになりました。

こうして、これらの知識・スキルの習得を目指すのが目的のSTEM教育という概念が生まれました。

その後、国際学力調査の普及に伴い、未来の社会を担っていく学生の科学技術の造詣を深めるSTEM教育を国家戦略とする動きが世界中に広まることになりました。

例えば、イギリス政府は2004年「科学とイノベーションにつながる投資に関する10カ年計画」を打ち出しています。
また、アメリカでは2007年に「アメリカ競争力法」を制定し、幼稚園から大学院・ポストドクターまで一貫してSTEM教育を拡充することを国家戦略の柱の1つに掲げています。

STEMからSTEAMへ 2010年代から

2000年代に入り、「情報社会」の発展スピードはより早くなり、あらゆる分野で高品質化や効率化が進むことになりました。

このような世の中になると、「沢山の機能・効率的で便利なもの」の追求で提供されるモノやサービスに対して、人々は魅力的に感じることが少なくなってきました

「沢山の機能」「効率」というのは、どこか人間を置き去りにしたような感覚があると思います。
例えば、ボタンが沢山ならんだリモコンが必ずしも人にとって使いやすいとは限りません。使われる頻度の少ない機能もあるでしょう。

そうしたことから、「情報社会」の次にくる社会を担っていく人材には、より「人々にとって真に必要なものとは?」「人類に真に役にたつこととは?」あるいは「人々が面白いと思えるものは?」、人の気持ちに寄り添った、共感を大事にする「芸術・人文主義」という思想や行動原理が重要になってくると考えられるようになりました。

これが「Arts(人文主義)」です。

こうしたことから、これまでのSTEM教育に広い意味でのArts(芸術・人文主義)を加え、2013年頃からSTEMからSTEAMへ発展してきました

こうして「人々が生きる社会・人類の未来に寄り添う心を持ち、自ら社会の課題を見つけ出して解決していく能力を育成する教育」としてSTEAM教育という概念が生まれました。

STEAM教育で「なにを」「どのように」伸ばすのか?

STEAM教育が生まれてきた背景をみていただいたように、STEMも、STEAMも「その時代を変革していける人々」「社会課題を見つけ解決していく人々」を育成するのが目的です。

現代は「超スマート社会(Society5.0)」に向かっている過渡期であると言えます。

「超スマート社会(Society5.0)」とは、IoT(Internet of Thingsモノがインターネットを介して通信すること)により、すべての物や情報、人を一つにつなぐとともに、AIなどの活用により、人々にとって質・量ともに最適化をはかっていく社会のことです。

この社会変革を起こすために、結果として、知識としてのSTEM領域と、人の気持ちに寄り添い「共感」していく熱い思いが起こす行動力が求められているのです。

では、教育によって「なにを」「どのように」受けると、STEM領域の知識を得て人々に寄り添った行動力を培うことができるのでしょうか?

STEAM教育で「なにを」伸ばすのか

知識:STEM領域を全ての人が学ぶ

「超スマート社会(Society5.0)」に向かうにあたって、より多くのモノがインターネットに繋がり、必要なものは人の手で、機械でできるものは機械でと、より最適化された社会になっていくと考えられます。

実際、私達の生活の中にもAI技術が浸透してきました。
Siriやアレクサのような自動音声応答システムは、あたかも人間がそこにいるかのように受け答えをしてくれます。

こうした技術を支えているのは、いうまでもなくSTEMに代表される科学技術であり、STEM領域の知識が重視されるのはおわかりいただけることと思います。

大事なのは、今後はすべての人がSTEM領域を学んでいく必要があるということです。

これまでは、コンピュータで作業をする人というのは特別なスキルを持った人という認識だったと思います。
しかし、すでに多くの方がスマートフォンを持ち、全てのモノがインターネットに接続される世の中が目前となっている現状において、未来を担っていく子どもたちがIT技術に疎いというのは困るわけです。

日本でも、2020年度からプログラミング教育が学校教育に導入されたことからもわかるように、すべての人がSTEM領域を学び、身近になった情報技術を活用していけるようになろうということです。

スキル:4C

社会の変革を起こすために、知識としてのSTEM領域は重要なのですが、これを1人で全てカバーするのは困難を極めます。
ですので、「三人寄れば文殊の知恵」で異分野な人々が協調していくことが重要になってきます。
この協調作業を進めていくのに必要な能力というのを、全米教育協会が以下の「4C」として提唱しています。

スキル:4つのC
  • Critical thinking 批判的思考
  • Communication コミュニケーション
  • Colloboration 協働
  • Creativity 創造性


わかりやすくまとめられていますね。

他分野にまたがる人々がそれぞれの知識をもとに「創造性」からアイデアを出し、お互いに「コミュニケーション」をとり、「協働」し、「批判的思考」で意見を出し合って、より人々に寄り添ったモノやサービスを生み出したり、社会課題を解決していくということですね。

人とのかかわり合いの重要性を改めて問われると、「人見知りの性格だしこんな能力はない…」などと不安になるかもしれません。

しかし、本来スキルというのは「訓練によって培われる能力」を意味する言葉です。
こうしたスキルは、皆が潜在的に持っている能力であって、その人にあった適切な訓練をすれば「誰でも」引き出せるものです

こうした訓練を学校でも家庭でも、意識してしていくことで、未来を担っていく子どもたちの潜在能力を引き出してあげることが重要ですね。

マインドセット:「社会を変革しよう」という気持ち

新しい社会へと変革を起こす時というのは、「行動する力」が必要です

今生きる社会の課題をみつけそれを解決するため、あるいは技術革新をもたらすためにまだ誰もやったことないことをやってみようとすることは、勇気のいることです。
行動を起こすために必要なマインドセット(心持ち)とは何でしょう?

行動を起こすためのマインドセット
  • 既存の価値観にはまらない「発想」
  • ひとまず「形にしてみる」という「挑戦心」「失敗を恐れぬ心」
  • 失敗から前進する「試行錯誤する心」

新しい「発想」を生み出すときに、えてして邪魔になるのは、今まで生きてきた環境や学んできた専門領域から生まれる既存の価値観、いわゆる「思い込み」です
こうした「思い込み」を薄めるのに効果的なのは、沢山の人と関わり意見を聞く、多様な文化・分野を渡り歩くといったことです。

身近なことでもご経験があると思います。

例えば、恋愛。相手が育ってきた環境はたいてい自分とは異なるはずです。異なる価値観に出会い「そういう考え方もあるか」と思うこともあります。折り合いがつかないとお別れという悲しい結果になることもありますが。
異業種交流会などでも、物事の進め方に対するアプローチが異なったりしますよね。
そうして、自分の持っている「思い込み」を薄めておくことが、価値観にはまらない「発想」をするために大事だと思います。

また、多様な文化や分野を渡り歩くことで、物事を捉えるのにことなる複数の視点を持つこともできるでしょう。そこから、各分野を融合することから得られる相乗効果によって新たな発想を生むこともできると考えられます。

次の「挑戦心」と「試行錯誤」はセットになるものですね。

1人の人間が考えられることには限界があります。
失敗を恐れず、「アウトプット」して人々からフィードバックを頂いて磨いていく方が、より「共感」を得て、人々に寄り添ったものになるということです。

また、別の効果として、人間の脳は「アウトプット」することで、より理解を強化してくれるものでもあります。

実際、私も本記事を書きながら体感しています。
この記事を書くにあたって、STEAM教育についての書籍をいくつか読み理解できたと思っても、こうして文章にすることで「どうも本質を捉えていないように思う」「わかりやすく伝えられていない」と思うことが幾度もありました。
アウトプットすることで、頭の中で整理がつき、自分の理解もよく深まってくるのを感じています。
こうしたことから、「アウトプットしてみよう」という心持ちで行動することが、より人に寄り添った何かを生み出す一歩になると私は信じています。

ここまでみてきますと、私が受けてきた昭和~平成初期にかけてとだいぶ印象が異なるように思います。
私が受けてきた教育は、「周囲と同調」していることが良しとされました。
また、なるべく「失敗」しないことを求められてきたようにも思います。
となると、今までの教育とは異なるアプローチが必要になりそうです。
どのような方法をもって、能力を伸ばしていくのでしょうか?

STEAM教育で「どのように」伸ばすのか

社会課題を解決する人々のために必要な能力は「STEM領域の知識」、「人によりそうArts」、「社会を変えようというマインドセット」ということがわかりました。

それを身につけるための具体的なアプローチについてみていきましょう。

アプローチ:教科横断的へ

STEM領域の知識は、全ての人に触れてもらうことが大事だということを、前に申し上げました。
また、既存の価値観にとらわれない発想をするための自身の「思い込み」を薄めるため、あるいは相乗効果を生み出すために、多様な分野を渡りあるき関連付けることの必要性も申し上げました。

こうしたことから、教育現場においては教科ごとの縦割りで教えるのではなく、各教科の内容を精査した上で互いに呼応できそうな要素を上手に関連させて教えるようなアプローチが取られることになります。

学び方:学習者主体の「探究型」へ

次に、学び方についてです。

従来の学び方は、教師が主体となって知識やスキルを、児童・生徒に教えていく「指導型」のスタイルでした。

こうした学習スタイルですと「失敗を恐れず、まずはやってみて、他者からフィードバックをもらい、試行錯誤していく」といった行動ができる人間を育てるのは難しいと思われます。

ですので、今後は児童・生徒の学習者が主体となり、教師はファシリテータに徹するような「探究型」のスタイルに移行する必要があります

「探究型」の学びには、以下のような例が挙げられています。
(参考:リンダ・ダーリン・ハモンド『パワフル・ラーニング』深見俊孝編訳、北大路書房)

探究型の学び例
  • プロジェクト・ベース学習…学習者が少人数のチームを組んで、自ら課題を設定し、リサーチや実践を通して解決していく学習方法
  • プロブレム・ベース学習…学習者をグループに分け、あらかじめ課題を提示し、解決に向けた方法やリソースをグループ内で意思決定しながら、そのプロセスで解決に至る道が一つではないことを学習さえる指導法
  • デザイン・ベース学習…学習者が持っている既存の知識や発想を、デザイナーが用いる方法論(プロトタイプ作成→フィードバック→リデザインのサイクル)を用いてものづくりにつなげ、そのプロセスから学習する方法

なんだか、企業研修のようにも見えてきます。

探究型の学びをするためには、学習者(児童・生徒)が自ら学びたいという気持ち「探究心」も大事になります。

日本でも、学習者が能動的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」が聞かれるようになってきました。
現状はまだ、受動的な授業が多いかもしれませんが、今後はこのような形になっていくものと考えられます。

まとめ 親として何がサポートできるか?

このように、STEAM教育について掘り下げてきました。

STEAM教育で伸ばすもの
  • 科学技術分野(STEM領域)の知識の融合
  • 共感を大事にする「芸術・人文主義」
  • 人によりそえる「共感力」
  • 型にとらわれない発想・挑戦する心・試行錯誤する心
  • 4C(批判的思考・コミュニケーション・協働・創造性)
  • 自ら学ぶ探究心

こう見ると、正直、盛り沢山ですね。

最後に、親として何がサポートできるのかを考えてみます。

私が受けてきた教育は「社会に適応できる人間」を育てるような教育でした。
一方、子どもたちに求められるのは「社会を変えていく人間」です。
ですので、自分が受けてきた教育のイメージで子供を型にはめることのないようにしたいと思います。

あとは、家庭で最もサポートできる部分としては、「マインドセット」かと思います。

「社会を変革しよう」という気持ちはだいそれたことのように思えます。
でもこのイメージを持ちつつ、何かを始めたところで損をすることはないのではないでしょうか?

子どもの「やってみよう」という気持ちを大事にし「好奇心」を応援します。
子供の意見をきちんと聞いた上で、他の見方を与えてみます。
失敗してしまったときは「うまくいったこと」に気づかせ、次に「どう行動すべきか」を一緒に考え、失敗を恐れない心を育みます。

シンプルにいうと、「頑張った」を必要十分に認めてあげることが重要なのだと思っています。

以上、長くなりましたが、STEAM教育についての私なりの解釈でした。
読んでくださってありがとうございました。

▼本記事を書くにあたり、以下の書籍を参考にしています。

▼子供の失敗に対して、ついつい叱ってしまう。そんなときに私はこの本に出会って救われました。

▼できないと自信をなくしがちな子にどう声をかけていくか悩ましい方へ、「マインドセット」という書籍について記事にしています。よろしければご覧になってみてくださいね。

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