子育てには正解がありません。
そんなことは分かっていて、でも、失敗はできない……
そもそも、どうすれば成功なのか? 何が失敗なのか?
そういった定義付けさえできていなかったり。
そして、子育ては自分の経験からしか善し悪しが判断できません。
周囲の保護者の方や子供の友人たちとの交流の中で
「塾に行き始めたよ」
「サッカー始めたんだ」
「スマートフォンを持たせることにした」
「お小遣い制導入したの」
「中学受験を検討していて……」
などと聞くと、
「うちはどうしようか? このままでいいのか?」
と揺らぐこともあるかもしれません。
そして世のお父様達、妻からこうした相談をされることもあるでしょう。
ご夫婦でどのように解決されていますか?
みんなの子育てはどのような感じなのだろう?
どのような子育て方針を持っているのだろう?
特に、世の中で成功していると言われている人たちはどうなの?
他のご家庭の子育てが気になる! 参考にしてみたい!
そんな思いをお持ちの保護者の方、特にお父様へオススメの
「子育て経営学 気鋭のビジネスリーダーたちはわが子をどう育てているのか」
をご紹介してまいります。
子育て経営学 気鋭のビジネスリーダーたちは わが子をどう育てているのか
子育て経営学 気鋭のビジネスリーダーたちはわが子をどう育てているのか
宮本恵理子著
2018年8月13日 発行
日経BP社
本書の扱うテーマ
本書のテーマは「経営者である男性から見た、子育てへの関わり方」です。
本書は、現在も連載中の日経ビジネスオンライン上の40代以下のビジネスリーダーに子育てを聞く「僕らの子育て」の中から、10名の男性リーダーへのインタビューをまとめられた本です。
子供への関わり方、仕事との両立(ワークライフバランス)、子育てを家族で上手に回すための工夫、自分が子育てに関わる上での原体験、子供の教育プランなど、子育ての上で悩む様々な事項が質問され、それに対して、それぞれのリーダーたちが回答されています。
彼らの日常の過ごし方や、子育てにおける考え方を垣間見ることができる本となっています。
著者 宮本恵理子氏について
1978年福岡県に生まれ。
筑波大学国際総合学類卒業後、日経ホーム出版社(現・日経BP社)で雑誌編集・記者経験をされたあと独立され、インタビュアー兼ライターとして10年活動されてきた方で一児の母でもいらっしゃいます。
週刊誌「AERA」の共働き夫婦のインタビュー連載「はたらく夫婦カンケイ」を企画・受け持ちされ、「日経DUAL」の立ち上げ期から執筆、働き方や生き方、家族をテーマにして、雑誌やウェブ、書籍で執筆活動をされています。
本書の概要
構成
次世代を担う若きリーダーたちは、子育てにどのように関わり、どのような“人育て”に挑戦しようとしているのか。
子育て経営学 はじめに(P6) より
学校選びは? お小遣いのルールは? 夫婦の協力体制は? 将来の職業選択にどんなアドバイスをする?
子育てのベースとなる原体験として、彼らはどう育てられてきたのか。
そして、ビジネスと子育ての相乗効果はあるのか。
人生において、子育てはどんな意味を持つのか。
聞きたいことが、次々に湧いてきた。
「はじめに」で語られる著者のこの想い。
本書は、この想いを10名の経営者にぶつけられたインタビュー形式で進んでいきます。
回答者は以下の方々です。(敬称略)
- 入山章栄 (早稲田大学ビジネススクール准教授)
- 玉川憲 (ソラコム社長)
- 綱場一成 (ノバルティスファーマ社長)
- 豊田啓介 (建築デザイン事務所noiz代表)
- 乃村和正 (SOUSEI社長)
- 西村琢 (ソウ・エクスペリエンス社長)
- 重松大輔 (スペースマーケット社長)
- 中桐啓貴 (ガイア社長)
- 小沼大地 (NPO法人クロスフィールズ代表理事)
- 伊佐山元 (WiL共同創業者CEO)
皆さんの「1日の過ごし方例(平日・休日)」がチャートで示され、
「教育プラン」「習い事は?」「お小遣いは?」「スマホやゲームなどのデジタルデバイスは?」「子供がよろこぶ得意料理は?」「子育てを円滑にするための工夫は?」が表サマリでまとめられ、詳細について語られているという構成になっています。
では、それぞれの質問内容について簡単にまとめて参りましょう。
教育プラン
キーワードとして「多様性」を語られる方が多くみられました。
小学校は大半のご家庭が公立小学校に通わせており、地域の様々な背景を持った子どもたちとの交流がよい経験になると考えられているようです。
一方で、将来的には「海外経験もさせたい」というご家庭も多かったです。
将来的な職業選択も含めて、進路については皆さん「子供の好きを伸ばす」という方針をお持ちでした。
ご自身もそのように育てられてきた背景があるようで、実際、好きなことを追求して沢山の努力をされて経営者として成功されている経験がありますので、自信をもってその方針を貫けるのだと思います。
個人的には、このような成功体験のない者にとっては、この方針を取ることは勇気がいることだと思うので、ここをどう捉えるかは人によって異なる部分かと思います。
習い事
習い事は複数されているご家庭が多く、すべてのご家庭でスポーツをされていました。
社会に出てからも1人でやれることは少ないため、他者との協力・チームとしての向上を経験できるチームスポーツ、あるいは、努力をして成果を出してきたという自信につながる、などスポーツの効用を重要視されているように感じました。
その他、習い事に関しては基本的にはお子さんの興味に従って選択されているようです。
かなり沢山のことを経験させているご家庭もあるので、そのあたりは経済力のなせるワザだなと思いました。
お小遣い
お小遣いは、小学生のお子様は定額制で管理は少なく、申請制の方が多い一方で、3歳からお財布を与えてお金を使う機会を与えているというご家庭もありました。
デジタルデバイスとの付き合い方
こちらの回答は最もばらつきがありました。
好きなように触らせる(入山氏)、3歳から積極的に利用させ失敗経験も積ませる(乃村氏)もいらっしゃれば、1回15分1日2回までとルールを決めている方(西村氏)、自分で考える経験を積めるまで一切なし(豊田氏)と制限させているご家庭もありました。
私もそうですが、デジタルデバイスは親が子供の頃にはなかったものですので、ばらつきが大きいのかと思います。
得意料理
それぞれ得意不得意がありますので、一切パートナーにおまかせという方も幾人かいらっしゃいました。
子育てを円滑にする工夫
インタビュー当時、パートナーが専業主婦の方は3名だけで、あとはフルタイムでかつハイキャリアのパートナーの方々です。
そうした中で、積極的にアウトソース(家事代行・シルバー人材センター)を利用する方、親戚の協力がある方、パパ同士のネットワークで支援体制を作る方、様々な方法で外の力を利用して進められていました。
一方、外部の力を使いつつも頼りすぎていないという部分も印象的でした。
週のうち送りは夫、何日かはお迎えに行く、朝食は必ず準備など、子供との関わりを持つ時間を大切にされていて、妻のキャリア実現も同じように大事なことと捉えられていました。
また、プライベートと職務を分けすぎていない方が多いというのも印象的でした。
重松氏は「ワークとライフをわけることがそもそも無理」と仰っています。
毎週月曜日は必ず家にいる(入山氏)、自宅のリビングテーブルで子どもたちが宿題をやる時に自分も一緒に仕事の資料を読む(伊佐山氏)、事務所に子供を連れていけるようにした(西山氏)、夕方に一度うちに帰って宿題を見て夕飯を食べてから再出社する(豊田氏)など、働くも生活の一部として子供に背中を見せているようです。
この点については、みなさん経営者ですので、関わりのある方の協力は必要なものの、柔軟な働き方を自分で意思決定できる強みがあるなと感じています。
正直、一般的な会社員ではここまで柔軟な働き方は困難かもしれません。
回答の共通点
皆さん、住んでいる環境、パートナーの状況、子育ての支援を得られる状況などそれぞれ異なるのですが、回答内容に以下のような共通点が見られました。
1.子育て=人育て として、中長期的なビジョンを持っている
2.家族は「チーム」。夫婦や年の離れた兄弟も含めて、得意分野に応じて役割分担。
3.子供には「好きなこと」を見つける多様な経験を与える
4.働き方のオンとオフを分けすぎず、柔軟に働く
5.共働きは当たり前、妻と仕事について語り尽くす
6.家庭外の力(アウトソース/地域の付き合い/親戚)を前向きに活用する
7.子育ての経験は、事業や組織を成長させるチャンスと考えている
印象として、よくご夫婦で子育ての話をされていると感じました(それぞれの妻の方々がどう思われているかはわかりませんが)。
子育てに対して「目標」を持っていたり、パートナーや子どもたちを「チーム」と捉えてコミュニケーションを取ることを厭わずにされています。
子育ての経験は、喜びと捉えている方も多く、事業に結びつけることも忘れられていません。
以上が本書で語られている概要です。
得られたもの:他者を家庭に受け入れるというメリット
印象的だったのは、皆さん「家庭外の力を前向きに受け入れている」ところです。
もちろん、共働きで忙しいからというのが大きな理由だと思います。
ですが、それに加えて、子供にとってのメリットを意識されているように感じました。
例えば、豊田氏のご家庭では、フィリピン人のシッターさんに支援に来ていただいており、英語を使ったコミュニケーション以外にも異なる文化をもつ方との交流をもつことで互いに尊重しあうことの大切も経験できると語られていて「なるほど!」一石二鳥だなと感じたのです。
私自身、子供の手が離れてきて就業ということを考えた時、夫の就業環境との兼ね合いも含めて、これまではフルタイムは厳しいと思っていました。
ですが、むしろ沢山稼いで外の力をお金を払ってでも利用するというのもありだなと思えるようになりました。
経済的な負担や人付き合いする上でのトラブルという負の側面だけでなく、家族とは異なる人との交流、別の価値観に触れるというメリットも大きいのかもしれないと気付かされました。
「子供は社会で育てるもの」という考え方を、私自身ができていなかったかもしれません。
あとは皆さん、「子供の興味を最大限伸ばしてあげたい」と想っていらっしゃることです。
「子供は自分の分身ではない」ことを常に意識していると入山氏が仰っていましたが、親はついつい「あなたの年齢のときは、私はこうしてた」などと自分の経験から物事を言いがちですよね。
親の得意と子供の得意は違うのだから、口を出すべきではないし、レールを敷くことも考えていないようです。
その分、沢山の経験をさせて子ども自身の興味を広げるよう務められ、興味を追求することを応援されていました。海外旅行をされている方もいらっしゃいました。
これは経済力がないとできない部分なので、羨ましいですね。
まとめ 子育てに関わることは人生の喜びだ
本書の10名の経営者の皆さんの子育てへの関わり方を読み、共感できること、新鮮に感じること、いやいやこれは経営者だからできることだよねと自分に置き換えて困難だと思うこと、所々感じる部分がありました。
おさらいとして、以下のような共通点がありました。
1.子育て=人育て として、中長期的なビジョンを持っている
2.家族は「チーム」。夫婦や年の離れた兄弟も含めて、得意分野に応じて役割分担。
3.子供には「好きなこと」を見つける多様な経験を与える
4.働き方のオンとオフを分けすぎず、柔軟に働く
5.共働きは当たり前、妻と仕事について語り尽くす
6.家庭外の力(アウトソース/地域の付き合い/親戚)を前向きに活用する
7.子育ての経験は、事業や組織を成長させるチャンスと考えている
本書に登場される経営者の皆さんは「子育ては喜び・楽しいもの」という認識をお持ちでした。
広く一般にそういった意識が広がっていって欲しいなと思います。
子育ては、親も成長させてくれるものだと思います。
本書に登場された皆さんの経験を、自分の新たな抽斗として参考にしつつ、私も試行錯誤していきたいなと思います。
私自身の子育ても貴重な経験として、前向きに捉えていきたいです。
以上、「子育て経営学 気鋭のビジネスリーダーたちはわが子をどう育てているのか」のご紹介でした。
▼新たな10名のリーダーに聞いた本書の続編も出版されました! (2020年1月)