わが子に対して、どのような職業でも、どのような環境でも、自分の人生を切り開いて豊かに生きていってほしいというのは親の共通する願いだと思います。
「勉強を努力して、偏差値の高い大学に入って、大企業に入って経済的安定を手にいれれば安心」
なんてことは、もう昔の話。
私は就職氷河期世代であり、入社した会社が消滅するという経験もしており、実感としてこのようなことは口が裂けても言えません。
では、それに変わる新しい指標とは何なのでしょうか?
今、ペーパーテストやIQ試験などでは計ることができない「非認知スキル」が注目されています。
さて、「非認知スキル」はどのように伸ばすことができるのでしょうか?
そんな疑問を持つ保護者の方へ、ご紹介したい本です。
親が偏差値思考をやめれば、不思議なほどわが子は伸びる
親が偏差値思考をやめれば、不思議なほどわが子は伸びる
AI時代を生きるための「非認知スキル」
青木唯有 2021年3月15日 幻冬舎
本書は、統合型選抜の指導を20年以上にわたり指南してきた著者が、子どもたちが自分の足で生きていけるスキルを身につけるために、親が子どもたちをどう支えていくか、家族のあり方について提示した本です。
統合型選抜を題材にしていますので、高校生の保護者が主な対象者と思いますが、未来を担っていく子供の教育について関心がある保護者、子どもたちに将来「食っていける」大人になってほしいと願う大人の方も含めて、読み応えのある本だと思います。
著者は、日本アクティブラーニング協会理事であり、人財開発教育プロデユーサーとして活躍されている青木唯有氏。
民間教育機関において大学入試の1つの形態である統合型選抜(旧AO入試)などの特別入試に特化した指導に携わり、早慶・国公立など、延べ3万人以上の合格実績を持たれる方です。
著者は、日本の産業界から世界のプラットフォーマーとなる発明・製品が誕生しない原因が教育制度にあると指摘されています。
自らの統合型選抜の指導のご経験から、現在の日本の教育制度(偏差値思考)の問題点とこれからの大学入学者選抜の方向性を示し、未来の人財育成に必要なスキル(非認知スキル)とそれを身につけようとする子どもたちを支える家族のあり方について言及されています。
非認知スキルは誰でも伸ばせる
本書を読んで興味深かったのは、統合型選抜を突破しようとするプロセスを経ることで「非認知スキル」を伸ばすことができ、それは誰にでもできることだということです。
私の中で、統合型選抜はスポーツや芸能などの一芸に秀でている、限られた特別な人が選択する選抜方法というイメージがありました。
ところが、誰もが称賛するような結果を出していたとしても、今後自分が挑戦していきたいことについて、本人がそれを行う「必然」がストーリーとして語られなければ合格することはないのだそうです。
逆に、どんなに身近な経験であったとしても、本人がやるべき必然が、相手に伝わるように語れることが重要なのだと知りました。
このためには、どのような経験から何を学び、それを未来にどうつなげていくかを子ども自身が自覚し、自分の言葉で語れる必要があると筆者は説きます。
そのために有効な手段としてあげられているのが、自身の「ポートフォリオ」を作成し「常時観測」的に作ることで「自己理解」をするということです。
そうした上で、学びをより深めたり、じわじわと広げたりしていくことが見えるようになります。
自分を知る。
私にも経験があります。大人の皆さんも経験があるのではないでしょうか?
就職試験前に行う「自己分析」です。
自分の経験と、入社試験を受ける企業の理念、自身のやりたいことの接点をストーリーとして語る。まさにこれを統合型選抜でやっているのだと知りました。
ただ、自分を知る「自己理解」は「常時観測」的に行うのが重要だとされています。
試験対策での自己分析は、絵に書いた餅になりやすく、己がやらねばならぬ必然性がすっぽり抜け落ちてしまいがちだからです。
日頃の経験から何を学んだのか、これをポートフォリオに反映していく。
アウトプットすることで、何が自分を作る糧となり、どう変化したかを自覚するということだと理解しました。
子供の非認知スキルを伸ばす親の支援とは?
しかし、自分で自分を理解する、しかも常時 というのは子供にとっては難しいものです。
そこで親の出番です。
子供が体験した嬉しいこと・悲しいことなど、親からみた子供の姿や印象をお互いに共有することが子供自身の自己理解につながるということでした。
確かに、身近な人から、自分では思いもしなかったことを指摘してもらって気づきになることはありますね。
ただ、ここで少し注意が必要です。
手助けの方法を間違えれば、かえって子供の可能性をつぶしてしまいそうです。
そこに対する筆者の指南について、深くうなずくことができましたのでそのまま引用します。
とかく教育の現場でのキャリア指導は、「兎にも角にも夢を持つことが一番大事」と主張するだけの表面的でバーチャルな価値観か、反対に、「現実的には偏差値の高い大学への進学がリスクの少ない安全な生き方」という変なリアリズムによる可能性の搾取化に振れがちです。
実社会に厳然と存在する不条理や現実を共有しつつ、本人の存在をあるがまま受け入れるというレセプターとしての役割は、実は、保護者の方こそが果たせるのではないでしょうか。
そうした家族の中から生まれる安心感こそが、子どもたちが失敗を恐れずに、むしろ生き生きと行動する原動力になるのではないかと思います。
本書 P
いかに「レセプター」として本人の存在を受け入れるか? それは、
「過去脳」ではなく「未来脳」でわが子を見よ
と説かれています。
未来脳でわが子をみるというのは、わが子を未熟な存在として捉えるのではなく、「未知なる存在」として捉え、「失敗は未来を豊かにするための貴重な財産」ととらえ、子供の可能性を信ずる姿勢のことです。
ついつい心配から色々口を出してしまいがちなものですが、「待つ」ということが必要なのだなと改めて感じました。
以上が、本書を読んで私の心に刺さった部分です。
子供とともにポートフォリオを作り「自己理解」を深める
我が家ではどこかに出かけて新たな体験をしたり、なにか印象的な出来事が起きたときのみ、短文で構わないので日記を書いて自分の感情を記録しておくように子供に勧めています。
理想は毎日できるといいのでしょうが、私もできないことなので、子供には押し付けることができず……
ただ、何を感じたか不明な時もありますので、そこは会話で共有したほうがいいと感じました。
また、上の子はもうすぐ10歳になり本人の好きや得意が大分固まってきたように思います。
早速ポートフォリオを作ってみようと思いました。
子どもたちの思いを未来とどう結びつけていくかを、アウトプットしておくのは親子双方にとって良さそうです。今後の目標を立てるのに助けにもなると感じました。
まとめ:親は薪を与え続けよう
本来生物にとって大事なことは「どのような環境であっても生きていけるしなやかさ」だと思っています。
こうした「しなやかさ」を著者は非認知スキルを伸ばすことで身につけられると考えておられました。
常時「自己理解」に努め、自分の経験とやりたいことの道筋をつけ、ストーリーにできることが肝です。
親の支援のポイントは「未来脳でわが子を見つめる」ということ。
焚き火に薪をくべて火を絶やさない守り人のように、子供に適切なタイミングで、掛け値のない期待をあげつつスキルを伸ばしていってあげるのが親の役割だと再認識しました。
子供が「一人で食える人間になってほしい」と願う保護者にとって、子供を伸ばす1つの方法としてヒントを与えてくれる本だと思います。
他にも、日本アクティブラーニング協会で定義されている25の非認知スキル、統合型選抜に合格する子の親に共通する8つの習慣についても具体的に説明されています。
実際に統合型選抜に挑戦するお子さんの保護者にとっても、選抜のイメージがつかみやすい良書といえるでしょう。
私自身は、子供の可能性を伸ばすために「ポートフォリオを作り自己理解をして掘り下げていく」という気づきを与えてもらうことができました。
以上、【親が偏差値思考をやめれば、不思議なほどわが子は伸びる AI時代を生きるための「非認知スキル」】のご紹介でした。
気になる方はぜひお手にとってみてくださいね。