教育・学習の疑問

【本紹介】勉強・習い事 子供のやる気を起こさせるには?

教育・学習の疑問
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世間には、人には持って生まれた「才能」がありそれがすべてを決める、という考え方がありますね。
「あの子は頭がいいよね」「彼は運動神経がいいからサッカーも上手ね」「あんなに美しくバイオリンが弾けるなんて音楽の才能に恵まれているのだわ」などと。

一方で、人間は努力さえすれば大抵のことはできるものだ、という考え方もあります。

あなたはどちらの考え方ですか?

もし、「努力すれば大抵のことはできる」というお考えであれば、これからご紹介する本を読む必要はないでしょう。信じる道をそのまま突き進んでください。

かくいう私はというと、才能があっても努力は必要だと思ってはいますが、基本的には「才能がなければなし得ないことがある」と思っていました。

私は、子供の頃から親には「私に似たから運動ができないのは当然よ」と運動神経必要理論を刷り込まれてきています。周りの大人たちも「あの子は運動ができる子」「あの子は勉強ができる子」と規定しているように見えました。
そんな世界で生きてきたわけですから、当然私もそういう考え方になっていたのだと思います。

そんな私にとって、これからご紹介する本は、これまでの私の価値観をひっくり返してくれるものでした。

なべこ

子供とともに「学び」を日々試行錯誤中。
知る/感じるをバランスよくがモットー!
地方公立小中高・私大理工学部卒。システムエンジニア歴10年。
塾なし自宅学習で「自分で考える」にずっと向き合って来ました!
ゆるフリーランス/保育士/学校教育サポーター

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キャロル・S・ドゥエック著「マインドセット」

本書の扱うテーマ

ご紹介するのは、キャロル・S・ドゥエック著『マインドセット 「やればできる!」の研究』です。

本書は、「心の持ちよう=マインドセット」を「しなやか」にすることで、自分の資質は努力により伸ばすことができる、と解説されています。

人間の能力は生まれながらにして決まっているという「硬直した」マインドセットから、「しなやかなマインドセット」に心持ちを変化させることで、自分自身が持つ資質を変えることができるのだと、スポーツ、ビジネス、恋愛、教育などの様々な場面における事例とともに解説されています。

著者 キャロル・S・ドゥエック博士について

著者はスタンフォード大学心理学教授にして、パーソナリティ、社会心理学、発達心理学における世界的な権威です。
30年近く人間の思考様式に関心をよせ、やる気やメンタルヘルスに対する多大な貢献をされてきた方です。

私がこの本を手にとったきっかけは、『世界を変えるSTEAM人材』を読んだからです。
この本において「イノベーションのマインドセット」が未来を担う人材には必要だと書かれており、その際に「誰もが努力でイノベーションのマインドセットを身につけることができる」ということが、本書を引き合いに出して説かれていたからです。

本書の概要

それでは本書の内容について見ていきましょう。

「訓練をほとんど、あるいはまったく受けなくてもできてしまう人もいる。だからといって、それ以外の人は訓練を受けてもできないというわけではない」

上記は本文からの引用です。
「訓練を受けなくてもできてしまう人」、世間では”才能のある人”あるいは、”器用な人”と評される人だと思います。
「それ以外の人」は”才能のない人”と言われる人々のことでしょう。
それらの人々も「訓練を受けてもできない」ということは否定されるということです

本当なのでしょうか?

著者は人の「マインドセット=心のもちよう」には2種類あると説いています。

1つは「growth mindset(しなやかマインドセット)」

「人間の基本的資質は努力次第で伸ばせる」という考え方です。
「しなやかマインドセット」をもつ人たちは、自分の潜在能力が開花するのに時間がかかるのを知っており、自分が犯した誤りを素直に認められれば教訓を得てまだ成長していけることを知っている人たちです。

もう1つは「fixed mindset(硬直マインドセット)」

「才能こそすべて、自分の能力は固定的で変わらない」という考え方です。
「硬直マインドセット」をもつ人たちは、自分の能力を繰り返し証明し、成功すると誇らしさが優越感にかわり、失敗するとひどく落ち込むだけで別のもののせいにしたりするような人だと説明されています。

この2つのマインドセット、「しなやかマインドセット」の方があきらかに自分にとって得がありそうですね。

この心の持ちようは、特に何かを失敗してしまった時に大きく結果が異なります。

例えばテストで悪い点を取り続け成績が低下してきているとします。
「硬直マインドセット」の生徒は、「ぼくは馬鹿だから」「私は数学が駄目だから」と能力をなじったり「先生の教え方が下手だから」と責任を転嫁することになるそうです。

一方「しなやかマインドセット」の生徒は、なすべき課題をみつけ「もうだめか」という不安に苛まれながらも、やるべきことから逃げずに勉強に励むのだそうです。

言い訳をしても道は開けないですものね。

本書では、このマインドセットが、スポーツ・ビジネス・対人関係・教育の分野においてどのような結果をもたらすことになるのか、実在の人物を例として「しなやかマインドセット」の重要性が、沢山の例示とともに繰り返し説明されています。

得られたもの:教育によるマインドセットの養い方

私が本書で一番影響を受けたのは、「第7章 教育―マインドセットを培う」です。

かつての私がそうであったように、子供は親や教師の言葉から、マインドセットを植え付けられてしまうと説かれています。
よって、子供が「しなやかマインドセット」を持てるようになるためには、親や教師の関わり方が非常に重要になってくるのです。

昨今、子供の自尊心を育む、いわゆる褒める子育てが強調されていますね。
ですが、親がよかれと思ってしたことが、親の意図とは裏腹のメッセージを伝えている場合が少なくないのだそうです。

ではここで、本書で示されている例を元に、クイズをしてみましょう。

クイズ:
親が子供に声をかけています。
このなかで、子供に「硬直マインドセット」を植え付けてしまう恐れがあるメッセージはどれでしょう?

  1. 「今日は宿題、ずいぶんはやくできたのね!」
  2. 「あなたは賢い子なのだから、次はきっとできるわよ」
  3. 「長い時間一生懸命に宿題をやっていたね。集中して終わらせられてえらいぞ」
  4. 「そんなに早く覚えられたなんて、あなたは本当に頭がいいのね!」
  5. 「この作文には自分の考えがたくさん書いてあるね」
  6. 「あの絵をみてごらん。あの子は将来のピカソじゃないだろうか」

答えは、1,2,4,6です。

2,4は、「賢い」「頭がいい」と個人の特性を褒めていますね。
これは、子供にとっては「能力」を評価しているように聞こえ、「硬直マインドセット」を植え付けることになります。これは分かりやすかったかと思います。

6のメッセージは子供本人への評価ではないのですが、対象が他人であっても、能力を褒めているという点では2,4と同じです。
自分のことではなくても「親は能力を褒めている」というメッセージを子供は嗅ぎ取ってしまうそうです。

では1は?
これ、私はよく言っている気がします……。

これは「スピードを高く評価している」というメッセージに聞こえるそうです。
スピードや完璧さというのは「難しいことに挑戦する場合の敵」であり、こういう褒め方をすると「難しいことには手を出すまい」と思うようになってしまうそうです。

これは迂闊でした

このように、親や教師は子供に対して「努力と成長に注目したメッセージ」を送るべきで、そうした関わり方が、子どもたちに「しなやかマインドセット」を醸成していくことになると説かれていました。

挑戦に失敗はつきもの。

その際の、親の関わり方は「建設的な批判」が有効だとも書かれています。
子供の自尊心を傷つけないのは大事なのですが、失敗の原因から目をそらしても何もならないのです。

さて、前述のクイズですが、子供が素早く宿題をすませたというような1のケースでどう親は関わるべきか?
それについては、著者ならこういうと例が書かれてありました。が、ここでは書きません。
「なるほど」な答えでしたので、気になる方はご自身の目で確認してみてくださいね!

まとめ しなやかマインドセットを培うためには?

私には子供が2人います。
息子は身体の使い方が不器用です。特に上半身の使い方がうまくなく、縄跳びやボール投げは他の子と比べると下手くそで、鉄棒の逆上がりもまだできません。
一方の娘は器用で、縄跳びや鉄棒、ボール投げなど、大抵のことは何も教えなくてもいつの間にか身につけており、走るのも早いです。
息子は私に似て運動神経がなく、娘は誰に似たのか運動神経バツグンなのだと才能のせいにしていました。

そんな彼ですが、何もしないのもと思い水泳に通わせています。
最初に彼のクロールを見た時、腕が全然回っておらず犬かきのようになっていて、吹き出してしまいました。と同時に、この子がクロールを泳げるようになる日は来るのだろうか? と一抹の不安もありました。
あれから4ヶ月。人よりだいぶ長くかかりましたが、彼は美しいフォームを身につけていました。
今や私より美しくクロールが泳げるでしょう。

「訓練をほとんど、あるいはまったく受けなくてもできてしまう人もいる。だからといって、それ以外の人は訓練を受けてもできないというわけではない」

まさにそのとおりなのだと思いました。

私は本書を読んで、新しい1日を教えてくれる目覚まし時計のように、ぱっと目が覚めたような気がしました。

息子の経験とともに「しなやかマインドセット」の重要性を身にしみて感じました。
それでもある部分においては「硬直マインドセット」が、ひょっこり顔を出すこともあります。
本書の著者もかつては「硬直マインドセット」の持ち主で、いまでもそれがひょっこり顔をだすこともあるそうです。
心の持ちようがそうそうガラッと変わることはないと本書でも説かれています。
そんなことから、私も、できるだけ「しなやかマインドセット」を保てるよう心がけていきたいと思っています。

人間の資質は「努力で変えることができる」
子供にはそれを信じて、努力をすることを誇らしく思う自分であってほしいです。
そして、そうした環境づくりを親として心かげたいと感じています。

以上、キャロル・S・ドゥエック著『マインドセット 「やればできる!」の研究』のご紹介でした。

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