「子供のよいところを見つけて褒めてあげたい」
「子供の得意を褒めて伸ばしてあげたい」
親なら一度は誰もが考えるのではないでしょうか?
でも、現実にはなかなかうまくいきません。少なくとも私はそうです。
ついつい「できていないところ」を指摘しがち。
「まだ宿題やってないの?」
「また忘れ物したの? だらしないわね」
などと、小言が溢れてしまうこともありませんか?
そんな毎日を打破したかった私、ついに、親子のコミュニケーションの教科書とも言える本に出会えました。
ハイム・G・ギノット著「子どもの話にどんな返事をしてますか? ―親がこう答えれば、子どもは自分で考えはじめる」(原題:Between Parent and Child)
です。
本書を読んだ直後の感想としては、「第一子の母子手帳と共に配って欲しかった」と思うほどでした。
これがあれば、言語を習得した子供との付き合い方もすんなり言ったのではないかと思うのです。
ご自身のお子さんとのコミュニケーションに悩む方、ほめ方・叱り方に悩む方、ちょっと怒りすぎてしまう自分に嫌気が指している方はもちろん、教師や保育士、その他子供と関わりをもつすべての方々にオススメしたい本です。
これから内容に触れつつ、本のご紹介をしていきたいと思います。
ハイム・G・ギノット著「子供の話にどんな返事をしてますか?」
本書の扱うテーマ
ご紹介するのは、ハイム・G・ギノット著「子どもの話にどんな返事をしてますか? ―親がこう答えれば、子どもは自分で考えはじめる」(原題:Between Parent and Child)です。
本書は、「親子間の上手なコミュニケーションのとり方」について解説している本です。
こうした本は沢山あり、私もいくつか具体的なHow toが書いてある本を読み、実践してみたこともあるのですが、自分のものになりきれませんでした。
ですが、本書に説かれている「子供の気持ちに寄り添う=共感する」というシンプルな手法の解説を読み、理解することで、別の本で解説されていたこれまでのHow toがすべて腑に落ちました。
著者 ハイム・G・ギノット博士について
著者は、ハイム・G・ギノット博士。
イスラエルに生まれ、エルサレム大学を卒業後に教師となります。数年間の教員体験を通じて自分には教室の子どもたちに対応できる十分な能力がまだ備わっていないことに気づき、アメリカに渡りました。
1952年にニューヨークのコロンビア大学で臨床心理学の博士号を取得された後は、臨床心理学者として情緒的な問題を抱える子どもたちと接してこられました。
そうした中、子供とのコミュニケーションのとり方に関心を抱くようになり、独自のコミュニケーション理論を築き上げられました。
その後1965年に、心理療法の現場での子どもとのやり取りから学んだコミュニケーションの手法を、日常の親子の会話に適用した本書を出版。
爆発的な反響があり、世界30カ国に翻訳、累計500万部を超えるベストセラーになりました。
日本でも1973年に小学館から『親と子の心理学-躾を考え直す12章』という邦題で出版されていましたが、すでに絶版となっています。
本書の概要 行動の裏にある感情に「共感する」
著者は、子供の成長は親子間のコミュニケーションに大きく影響されると考えており、そのコミュニケーションは「スキル」として身につけることができると考えています。
つまり、誰にでもできる! ということなのですね。
コミュニケーションのスキルを身につける大切さについて、次のように述べられています。
子育ての目標は何だろう? 子供が成長して、礼儀正しい人間、慈悲心と責任感と思いやりを持った人間になるのを助けることである。
どうしたら子供を人間らしく育てられるだろう? 人道的な方法を用いることによってのみ、それは可能となる。それには、プロセスが大切であり、結果は手段を正当化しないことを認識する必要がある。また、子供に言うことを聞かせようとするあまり、子供を感情的に傷つけないようにしなければならない。
子どもたちの成長は、親とのコミュニケーションのあり方に大きく左右される。だから、子どもたちを怒らせたり、傷つけたり、自信を失わせたり、自分の能力や価値を信じる気持ちを萎えさせたりしない方法で話すコツを親は学ぶ必要がある。
本書 10章 思いやりのある話し方を学ぼう より
こうした考え方から、沢山の事例を元に「スキル=子供と話すコツ」を解説されています。
そのスキルには3つの大切な点があります。
1.子供の行動の裏にある感情に目を向け、その気持ちに共感する。
2.子供が自分の感情を理解するのを助ける。
3.感情に伴った行動については事実のみを述べ、行動のみを制限する。
キーワードは「共感」です。
子どもたちの行動の裏には、それを引き起こした「感情」が潜んでいます。
成長過程にある子供は、感情を抑制するのがまだまだ未熟です。
大きな感情は、大人から見ると望ましくない行動を伴って表現されることが、しばしばです。
「お菓子を買ってほしい子供がスーパーの廊下に寝っ転がってイヤイヤ攻撃」
はわかりやすい例でしょうか?我が子にもされたことがあります。
こうした場合、親は他のお客様に迷惑をかけてはマズイと焦るもので、
「こんなところで寝っ転がったら駄目でしょ!」と叱る
「この前買ってあげたでしょ」と無理やり引き剥がす
「いつもそんなことばっかり言って、いけない子ね」と批判する
と、言ってしまうことも。
わかります! とにかくお菓子が子供の目に入らないところに連れ去りたいと思うものです。
ですが、この対応はこちらの都合だけを押し付けてしまっています。
子供には親の都合はわかりませんので、自分を否定されたように感じてしまう のだそうです。
なので、この場合ですと、
「お菓子が食べたいのね」「新しいお菓子が欲しいのね」
などと、一度子供の気持ちに寄り添った対応をした後に、「事実を述べる」対応をします。
「廊下は寝るところではなくて人が歩くところ。立とうね」
そしてその場を離れます。
本書では、こうした「共感」を軸にしたコミュニケーションの取り方の具体例を、以下のような子育てで遭遇する数々のケースについて説明されています。
以上が本書の概要です。
得られたもの 子供と上手に話す基本原理
私が本書を読んで得られたことは、以下のような「子供と上手に話すためのコツ」です。
聞き上手へ 子供の気持ちを「受容」する
まずは、子供の言い分/気持ちをよく聞き、コミュニケーションの核心を理解する聞き上手になることです。
そうして、子供の言い分を受け入れる、「受容」していきます。
その際、以下の行為は「受容」の邪魔になってしまいますので、これらをしないということが大事になってきます。
- 知覚を否定しない NG例「見間違えじゃない?」
- 意見をけなさない NG例「おかしな考えね」
- 人格を傷つけない NG例「ほんとグズねえ」
- 感情に文句をつけない NG例「妬むなんて間違ってる」
- 願望をしりぞけない NG例「そんな願いかないっこない」
- 議論をふっかけない NG例「じゃあこれはどう思うわけ?」
- 好みをバカにしない NG例「そんなのが好きなの?」
言いたいこと、沢山湧いてくると思いますが、ひとまずは我慢です。
導き 問題と解決策の提示
さて、聞き上手に徹し子供の言い分を受容したら、次は親の考えを述べる番です。
問題と解決策を淡々と提示しましょう。
親の気持ちを伝える場合は、「Iメッセージ」で伝えます。
(Ex. 私は正直イライラしている)
その際に子供の性格を評価しないようにしましょう。
行為だけを褒める、あるいは叱ります。
子供が負の感情(嫉妬・怒り・不安)に捕らわれて好ましくない行動をしてしまった場合、感情そのものは否定しないようにします。
現実には許せないことでも空想の中では許すようにします。
それと同時に、親が介入し渦巻く感情を言葉によって発散させたり、なんらかの表現手段(絵を描く、外を走り回る、辛辣な詩を書く、殺人ミステリを書くetc)を用いて表現させるなど、感情のコントロールの方法を具体的に教えることが大切です。
このように「感情を許し、行動を制限する」ようにするのがポイントです。
子供の人生を左右する事項を決定するときは……
最後のポイントとして、子供の人生を左右するような事項、例えば進路決定においては
子供に選択と発言の機会を与える
のがポイントです。
あらかじめレールを敷いておいたりといったことは、好ましくない行為といえますね。
以上が、本書で著者が主張する「親子間のコミュニケーションのコツ」になります。
まとめ 子供の言葉の裏に隠れている気持ちに「共感」しよう
本書のポイントは下記です。
子供の気持ちへの「共感」「受容」がキーワードです。
本書の手法を、私と子供の間に適用してみたところ、親も子もイライラすることが少なくなりました。
こころなしか、子供から私に今日あったことを話してくれる頻度も高くなってきたように感じています。
本書は、半世紀以上前に書かれた本であり、手にとった時は全く期待していませんでした。
ですが、読み終わった今、本書に出会えたのは本当に幸運でした。
子供とコミュニケーションを持つ機会がある全ての方に、おすすめしたい本です。
以上、ハイム・G・ギノット著「子供の話にどんな返事をしてますか?」のご紹介でした。
なお、本書の著者は思春期の子どもたちを対象とした続編も執筆されています。
こちらの方が世界的には大反響が合った模様です。
こちらについては、また別途ご紹介記事にしたいと考えています。